3月16日の週報コラム「ひだり手」
★フロムは「愛とは与えることであって、もらうことではない」と言います。といってフロムは決して、献身的な自己犠牲の精神を説いているのではありません。フロムが言っているのは、わたしやあなたという一人一人個性を持った存在を「人間」として大切に思うということ、相手に配慮し、責任を持ち、尊重し、知る、ということ。そのために自分という人間を用いるということ、すなわち自分を与えるということ、です。自分は「愛する」力を持った存在であると自分自身を信じ、自分をも一人の「人間」として愛すること、自分を尊重することができなければ、当然人を愛することもできません。そういう意味で「愛すること」は自分を犠牲にすることではないのです。
★いずれも簡単なことではなくて、だからこそフロムは「愛すること」ができるようになるためには修練が必要だと言うのですが、でも、そういう「愛すること」、「愛されること」ではなくて「愛すること」を通じてこそ、はじめて人間は本当の意味で孤独から解放されるのだとフロムは説くのです。一生かかることかもしれません。そういう意味では実は「愛するということ」は「生きるということ」だと言えるのかもしれません。
★あなたは何を喜ぶだろうか。愛されることを喜ぶだろうか。いや、そうではなくて、愛することを、それを通じて、わたしたちがお互いに出会い、結び合い、そのことによって孤独から本当の意味で救い出されることを喜びはしないだろうか。聖書はわたしたちに向かってそんなふうに問いかけているような気がいたします。