1月5日の週報コラム「ひだり手」
★2013年を表す漢字として選ばれたのは「輪」という漢字でした。理由として、「日本中が輪になって」、オリンピックの東京開催、富士山の世界文化遺産登録、東北楽天イーグルスの優勝などの歓喜に湧いた年であったこと、自然災害への救援、支援で多くの「輪」が拡がったこと、フィリピンの台風被害に対する過去最大の自衛隊派遣、安倍内閣の経済政策を期待し、国民が「輪」となり景気回復を目指す。TPP協定の交渉によって、日本がアジア太平洋の「輪」に入るのかに注目、といったことが挙げられていました。自衛隊の海外派遣や、安倍内閣の経済政策、TPP交渉などは、わたしには、悪いことの「輪」が拡がったようにしか思えないのですが。
★わたしも自分なりに今の世相を表す漢字一文字を考えてみました。思い至ったのは「深」という漢字。「輪が拡がった」というよりも「闇が深まった」と言うべき状況です。原発の事故の収束も、放射能汚染も深まりこそすれ、改善には至っていません。他方で、秘密保護法の成立によって国家の秘密の闇が深まり、知らない間に、日本が戦争に繰り出していくのではないかという疑いも深まってきています。わたしたちは注意深く、この国のありようを見張っていく必要に迫られています。
★気になるのは、諸々の政策に対する批判が、そこではほとんど語られていないことです。先行きの見えない不安な時代、人はしばしば不安を忘れさせてくれる、言祝ぐお祭り騒ぎに一丸となって酔いしれます。日中戦争、太平洋戦争へとはまり込んでいく直前の時代、世界恐慌など時代の混迷が深まる一方で、軍隊を押し立ててアジア大陸へと進んでいく、時代の勇ましいかけ声に、それを批判する声は消され、ほとんどの人が時代を言祝ぎ、お祭り騒ぎに酔いしれていたのでした。そんな今から80年くらい前の時代の空気に、今の空気はとてもよく似ているのではないかとも思います。