12月24日の週報コラム「ひだり手」
〈いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ〉(ルカによる福音書2章14節)
★聖書のクリスマス物語は、真夜中に羊の番をしていた羊飼いたちだけに、飼い葉桶の中に寝かせられた救い主の誕生を告げています。それは不思議に満ちた物語です。なぜ、真夜中なのか、なぜ知らせを告げられるのは羊飼いたちだけなのか、なぜ、告げられる知らせは、飼い葉桶の中に寝かせられている乳飲み子なのか。この不思議な知らせが、わたしたちへの「しるし」であると言われます。聖書の語るクリスマスの出来事はわたしたちに、この不思議を解くことを求めているのです。
★不思議を解く鍵は、その次の天使の言葉にあります。「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、喜びの人々に」。光は神様がわたしたちにもたらしてくれるもの。人間は自分の栄光を求めて、かえって競争を引き起こし、敵味方に分かれて争い、暴力と傷をもたらしてきました。光は「いと高きところ」にいる神様が与えて下さるもの、人間はそれを自分だけのものにしようとしてはならない。わたしたちが光を、神様から与えられたものとして分かち合う時、地上に平和が生まれるのです。
★神様が天地万物を創られた時、神様は造られたすべてのものを見渡して、こう言われました。「見よ、それは極めて良かった」。これが神様が最初に挙げた喜びの声です。この世にあるものはすべて、本来神様から「とってもいい!」と喜ばれている存在なのです。ですから、「地には平和、喜びの人々に」というのは、この世界に生きるすべての人のもとに平和があるように、という呼びかけなのです。
★いま、わたしたちの生きる世界を見渡す時、力を持つ人々が自分だけの栄光を求める傍らで、平和を奪われている人たちが生み出されています。そんなもっとも小さくされた人たちのもとに、平和がもたらされる時にこそ、初めてこの世界に生きるすべての人々に本当の平和が訪れるのです。宮澤賢治さんは「世界が全体幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」と言いましたが、たぶんそれはほんとうのことです。